不動産の明渡し

建物明渡しの際の「残置物処分」に関する同意書

転勤などの事情があり、不動産業者を介さないで、自宅を他人に貸しておられる方で、家賃の滞納が4か月以上も続いたりして賃貸借契約を解除し、明渡しの交渉をしている方のご相談をお受けすることも何回かありました。この場合によくあるのが、建物の明渡期限については念書などの書面にしてもらうものの、残置物の所有権放棄ないし処分に関して書面化しないままになるパターンです。建物内に置かれた動産は、あくまで入居者の所有物です。ですから、大家さんが勝手に処分することは、認められないのです(「自力救済の禁止」といわれるものです。)。実際のところ、残置物の処分に関する同意書があるかないかで、建物の明渡にかかるコストは大幅に異なってくるのです。ちなみに、建物の賃貸借契約書に残置物の処分に関する条項が記載されている場合もありますが、自力救済を是認しかねない意味合いを有するだけに、その条項の有効性については、慎重な検討が必要です。建物の明渡の交渉にあたっては、弁護士の助言を受けながら行うことが得策だと思います。

不動産の明渡しの合意-即決和解で和解調書に

賃料の滞納などが続き、不動産賃貸借契約を解除したうえ明渡しを求める交渉をせざるを得ない場合があります。このような場合にも活用できる手続きとして、即決和解(起訴前和解とも呼ばれます。)という簡易裁判所の手続きがあります。この手続きを利用して、不動産の明渡しの合意を和解調書の形にするのです。和解調書化されれば、万一、明渡しの約束を破った時にはその和解調書で明渡しの強制執行が可能になるのです。もちろん、強制執行に至る前に任意に明渡しをしていただくための約束として即決和解を行うのです。明渡しを、やります、やります、などと安易に回答しつつ、実際には明渡しをなかなか実行しないパターン、結構あるのではないでしょうか。反対当事者が、確実に実現する意識の乏しい約束を、不誠実にも安請け合いするような場合に、即決和解の存在意義があるのだと思います。