交通事故

後遺障害等級の認定について

交通事故に遭い、これを原因として後遺障害を負った場合は、後遺障害に基づく損害についても賠償の対象となります。もっとも、後遺障害といえるのかどうかの立証に関しては、必ずしも簡単ではない場合もあります。後遺障害に該当するかどうか、該当するとしてどの程度の(何級の)後遺障害であるのか、については、損害保険料算出機構(損保料率機構)が判断した結果が1つの重要な証拠になります。自賠責保険会社は、損保料率機構に後遺障害の等級認定を求め、その回答結果に基づき損害額の計算をしているのです。損保料率機構では、後遺障害等級の認定をするために必要な知見を有する専門家たちが判断をしています。ですから、後遺障害等級認定を求めるに当たっては、事故時の状況やその後の症状の推移などを説明した陳述書をはじめ、十分な資料を添付してなすべきものです。当職は、後遺障害等級について非該当とされた事例についても、主治医の意見書を証拠として、裁判において12級に該当する旨の判決をいただいたこともあります(ただし、4割の素因減額認定を受けました。その後、高裁で和解により解決しました。)が、後遺障害等級非該当とされた事例について、裁判において後遺障害と認めてもらうのは、非常に困難なことです。後遺障害等級認定を求めるに当たっては、弁護士などの専門家に相談し、十分な準備をすることが重要だと思います。

交通事故直後の受診・検査について

交通事故が原因となり、後遺障害を負うに至る事例もよくあります。そして、後遺障害が交通事故を原因とするものなのかどうか、因果関係が争点になることがままみられます。このような場合、交通事故直後に受診した際に、十分な診察や検査(MRIによる撮影など)を行っていたかどうかで、後遺障害との因果関係の立証ができるかどうかに大きな影響を与えることがあります。交通事故によって受傷した直後には目立った症状がない場合でも、若干の日数をおいてから、症状が顕在化してくる場合もあります。交通事故で身体に衝撃を受けている場合には、事故直後の段階では、事故のショックで緊張しているあまりご本人自身も気づいていないだけで、実際には、身体にダメージが生じていることもありますから、必ず、病院で診察や検査を受けることをおすすめします。

交通事故の損害賠償について

交通事故に遭い、物損や人身傷害などの損害を被った場合は、弁護士に相談することをお勧めしております。特に、後遺障害が生じているような場合などは、ぜひ相談すべきだと思います。というのも、保険会社の提示する示談金額が、必ずしも適切ではないこともあるのです。弁護士は、「民事交通事故損害賠償算定基準」という本(通称「赤い本」)に基づいて、損害額を計算することができるのです。一番望ましいのは、事故後すぐに、ご自分の自動車保険の弁護士費用特約を利用して、弁護士に相談してみることです。事故後すぐにしたほうが望ましいのは、証拠を確保するという観点もあるからです。少なくとも、示談書(免責証書)を取り交わす前に、一度、示談金額が概ね適正なものといえるかどうかを弁護士に相談することが、より良い解決になるのではないかと思います。

一部債務不存在確認の訴え

交通事故に遭い、相手方の任意保険会社と示談交渉を続けていて、なかなか合意に至れず結論が出なくて困っているときに、交通事故の加害者側が原告となり、被害者を被告として、交通事故の損害賠償債務について、「一部債務不存在確認の訴え」が提起されることがまれに見られます。一部債務不存在確認の訴えというのは、加害者の交通事故損害賠償支払義務が○○円を超えては存在しない、という確認判決をもらって、加害者側において、判決で示された以上の支払義務がないことを法的に確定させ、残っている賠償金額を支払って早期に解決を図ろうというものです。加害者側から、交通事故の損害賠償金について、一部債務不存在確認の訴えを提起された交通事故被害者の方は、弁護士にご相談になることをおすすめします。裁判所が判断するのだから、わざわざ弁護士に相談する必要がなかろうとの考えもあるかもしれません。しかし、民事訴訟では、裁判所は、当事者の主張しない事実について判断することができません。つまり、例えば、加害者側が主張している損害賠償金額の計算のしかたにおいて、本来掲げられるべき損害費目がそもそも掲げられていないときは、裁判所は、適切な損害金額を認定することができない可能性があるのです。弁護士が損害額をチェックしたことによって、ときには、数百万円の賠償金額の増額につながる場合もあるのです。ですから、こういう場合の弁護士へのご相談は、あなたの権利を守るために、必須のものと言ってよいと思います。