消費者取引

中古不動産の購入は慎重に

最近では、消費者の権利意識が高まったせいか、法律相談をしていますと、相談者の方から「消費者契約法違反ではないですか?」「クーリングオフできないですか?」と尋ねられることが多くなってきました。消費者契約法は、そもそも対象となる取引が消費者契約に限定されていますし、クーリングオフは特定商取引法などの特別法に定められた特別な取引の際の特別な場合にだけ認められる権利(法定解除権)です。いずれも、広く一般的に取消権を行使したり解除権を行使したりすることを認めているわけではなく、細かい要件が満たされなければ取消権や解除権は発生しないのです。要するに、契約は成立した以上守らなければならない、という基本ベースがあり、例外的に、取消権や解除権がある場合には、契約の拘束力から解放される、ということは、クーリングオフなどの権利が認められる以前と変わらないのです。消費者契約法やクーリングオフの制度によって、一昔前から比べれば、悪徳商法の被害から逃れるのに多少容易になってはいますが、依然として、特に高額な代金の取引をする際には、消費者において、慎重に検討する必要があることには、何ら変わりません。たとえば、中古不動産を、売主・買主ともに業者ではない個人間で売買した場合は、代金の金額が大きくても、消費者契約ではありません。ですから、民法で売主に課せられた瑕疵担保責任を免除する特約は、有効です。このことは、個人間の売買を宅建業者が媒介して行った場合でも同様です。宅建業者による媒介があると、一見業者との取引に近いようにも見えますが、他方では、宅建業者は、瑕疵担保責任の免責条項についても買主へ重要事項説明することとなります。そうすると、買主は瑕疵担保責任免除特約を十分わかって購入したとも言いうることになりますから、この状況で買主が瑕疵担保責任の免責条項に関して無効だと争うのは相当に困難な状況なのです。高額な代金の買物をするときは、焦らずに、その場で決めずに、一旦自宅に帰って考えてみて、明くる日に考えが変わらなければ買う、というくらいでちょうど良いのかもしれません。